現代の匠

大工棟梁 三浦敏夫

大工になったのは何歳の時ですか

15歳の時、大工の道を志しました。
福山さんのとこ行ったの、21か22の時やったから。 福山さん、ツーバイフォーやるゆうて、面接いったんですわ。 最初、こんなの大工の仕事やと思わんかった。 知った人おらんかったから。
5時になったら仕事終えて、会社行ってビデオ見に行って。 ボランティアですわ最初は。 そんなんでお金もらえんし。 毎日やで、ビデオ見て。

1971年のことです。

だからなんも解らなかったですから、ツーバイフォーなんて。 だから、今までの観念を全部すててくれぇ言われました。 習てきたこと、ツーバイフォーやるんやたっら、ゼロにしてから、またイチから覚えてくれと言われました。
どうしても釘ゆうのは、まっすぐ打ちますやんか。でもツーバイフォーは、千鳥でいきますからね。 こっちいったら、次はこっちという感じで、そのスパンが大事なんや、間隔が、釘のピッチが。 ツーバイフォーに対して。
10本打って、同じとこ10本打ってもだめなんや。 同じ間隔でこう、やっていかなあかんから。 それを覚えるのが大変でしたわ。
全てピッチがあるからね。

今でこそどこのメーカーも、ツーバイフォーやってるから、あれやけど、マニュアル通り施工するか、せんかですわ。 そうですよ。今でもね。 もう仕上げ貼ってもうたら、わからんじゃないですか。このビスのピッチでも、100ピッチときまってるしね。 ジョイント、外周部に対して。

最初は抵抗ありましたよ。 もういやでいやでたまらんかった。 施工方法が解らんから、しょっちゅう、壁組んでも壊してばかりやったからね。

知った人がこう、 手取り足取り教えてもろたのとちゃうから。 現場で、今やったらその、教えてくれる人おりますやん。 どこ行っても。
昔そんなのなかったから。1から建てる方法考えました。

夜ビデオ見て、福山さんの7階で。
それを毎日ですよ。 5時から。 仕事終わって毎日。
京都大学の先生がいはったからね。
伊藤先生ゆう。
その先生が3年間研究して、1軒目やってるから・・・。 構造材を20軒分買うとったんですよ、施工方法を知るために福山さんが。

でも良い材料選ぶから、悪いのドンドンはねていきますやん。 そしたら、とてもじゃないけど、15軒も建たないんとちゃうかなと。 当時八重木材。 八重木材に材料置かしておいてもらったんや。

ツーバイフォーの歴史の本を書いた人がいて、 そこに福山住宅の名前がちゃんとでてくる。
当時外部の合板なんてなかったんですよ。 シージングボードやった。 筋交い入れて。 その次のできた合板が3×6合板や。 それをついで貼ってたんや。

 

全国初のツーバイフォー住宅を施工したのが三浦さんとお聴きしましたが

そうやりましたよ。
それで賞を貰っている。
福山さんは、 自分たちの意見を取り入れてくれましたからね。それでできたのが、今のツーバイフォーですから。

大手の住宅メーカーさんみたいに、東京で決めたことが、全国にばぁっと流れるわけじゃない。完全に福山さんのマニュアルができたからね。土台のプレカットも速かったし。そやから、今こそ大手の住宅メーカーさんが売れてるけど、そりゃあ福山さんの方がずっと上いってる。

だからこういう綺麗な家ができたんです。
向こうは資金力あるしね。 全国ネットやから、テレビで予算たくさん使こうてね。ええ宣伝して。外観はすばらしいですわ。デザインはね。でも中は大したことないですわ。いやいやほんまや。デザイン重視やもんね。

楽しいと感じるときはありますか?

そんな思ったことないけどなぁ。
仕事やんと思ってやってますやん。
お客さんに、 喜んでもらっているかなぁって聞きたい。 喜んではいってもらってるかなぁって聞きたい。
終わったらその現場のことは、すぐ忘れますから。 もう次のこと考えるから。 ほやから、間取り覚えてるもんじゃない。 この家の現場始まったら、ころっと忘れてるよ。 そらせな、次のことに打ち込まなあかんから。 そうですよ。
そりゃ、行ったら思い出しますよ。 あぁここはこういった間取りやったんやなぁ。
めったに行くことないもんねぇ、終わった家に対して。
呼ばれたらダメなんです。 お客さんに。
なんかあるから呼ばれるんやから。
ダメなんですそれは。

僕の師匠はね、手直しを一切出すなゆう師匠やったんや。 そう教えてもろた。
「手直しを出すような仕事すんな」って、教えてもろた人ですよ。 もう亡くなられましたけどね。
だから昔言われたのは、金儲けしよう思たら、職人の名を捨てって言われた。
ばば~っとやってね。
汚くやって。
ちょっと言われて、直した方が得なんですよ。
30日かかるとこ、たとえ20日でやったら、10日浮くじゃないですか。 その方がお金儲かる。

 

プロフェッショナルとは何ですか

お客さんの苦情のない家を引き渡すことやな。 一個所でも悪かったらだめなんです。 ひとつが悪かったら。 たとえひとつここが曲がったとします。 他が全部良くっても。 このひとつだけが目立つんですわ。 それをお客さん言いはるからね。 必ず。
アメリカ人とかあぁいう人やったらね。 戸が閉まればいいんですわ。 曲がろうが、どないしようが。でも日本人は違うでしょ。 対角がくるうとったら、絶対言いはるんや。 曲がってる!ゆうて。 そんだけ、日本人のお客さん、細かいんですわ。
だからいかに、苦情のない家を引き渡すか。 僕はそれに尽きると思いますよ。